
ここに、フランス・バロック時代の舞曲を紹介します。特にバロック期の時代的特徴をよくあらわしている曲、また当時、人々に最も愛され流行した曲を選びました。
これらの舞曲の出典はさまざまです。
音楽教師が弟子のために書いた手稿譜(その多くは作曲者不詳です)や、クラヴサン曲集の組曲、オルドル、また、オペラ・バレや室内楽などから採られています。
これらの曲の中には、現代的な記譜のかたちで世に紹介されるのは初めて、というものも多く含まれています。
こうした舞曲を、現代のピアノでも充分演奏できるように、また演奏する際に技術的に難しくなく、譜読みや曲の比較が容易にできるように、と配慮しました。
その際、ニュアンスやアーティキュレーション、指使いなどは、読者の自由な想像力にまかせましたが、「ヘミオラによる拍子の変化」については指示をしています。
また、この時代に特に洗練され複雑化した奏法に「フランス風」装飾音がありますが、本書では、基本のシンプルな表現にしました。
これらの舞曲を学ぶことが、フランス・バロック時代の様式や精神を理解するのに大変重要であることはいうまでもありませんが、それ以上に、あらゆる時代や領域におよぶ音楽語法の発展をよりよく理解するためにも、なおいっそう欠かすことのできない研究となるでしょう。
このささやかな曲集が、読者の探究心を喚起して、この稀有なレパートリーの開拓に向かわれますよう、そしてさらにいっそう読者の理解を深めてゆかれることを心より願っております。